【会計士が徹底解説】不動産特定共同事業法(不特法)とは?

不動産特定共同事業法について情報を調べているけれども、ネットの情報だと専門用語が多くてわからないと感じていませんか?

しかし、法律のボリューム自体は少ないため、法律の趣旨を理解すれば、全体像を理解することは難しいものではありません

この記事では、私が公認会計士として不動産特定共同事業法の許可取得のサポートを行う中で得た知識や経験をもとに「初学者が不動産特定共同事業法の全体像を理解できるようになること」を目的として、専門用語を極力使用しないで不動産特定共同事業法の概要を解説していきます。

結論から申し上げると、不動産特定共同事業法とは、下記2点を達成するために定められているルールとなります。

不動産特定共同事業法の目的
  1. 会社が投資家から出資された資金をもって不動産の売買や賃貸できるようにすること
  2. 投資家が不動産会社の倒産等により不測の損害を受けることから保護すること

以下、不動産特定共同事業法を詳しく解説していきます。

目次

不動産特定共同事業法とは

定義・目的

不動産特定共同事業法とは、下記2点の達成を目的に定められているルールであります。

不動産特定共同事業法の目的
  1. 会社が投資家から出資された資金をもって不動産の売買や賃貸できるようにすること
  2. 投資家が不動産会社の倒産等により不測の損害を受けることから保護すること

この目的を理解するために、簡単な取引を考えてみます。

具体例

あるアパートを購入して賃貸するビジネスへ参入しようとしているA社という会社があるとします。

しかし、A社はアパートを購入する十分な資金が自己資金や銀行借入では賄えそうにありません

他方で、少額で不動産投資にチャレンジしてみたい個人人投資家Xさん、Yさん、Zさんがいるとします。

不動産特定共同事業法

そこでA社は、Xさん、Yさん、Zさんの3名から出資を募り、その資金をもってアパートを購入し、賃貸経営によって生じる利益の一部を配当として3名に還元することを考えました。

しかし、Xさん、Yさん、Zさんとしては、A社が信用のおける会社なのか、出資した資金が本当にアパートの購入に使われるのか、また、アパートの賃貸経営の状況等を知ることができないのであれば、安心してA社に出資することができません

そこで、不動産特定共同事業法は、Xさん、Yさん、Zさんのような投資家が安心して不動産に出資できるように、A社のような出資を受けて不動産取引をする会社に十分な人材や組織が整備されていることや十分な財産が確保されていること、また、不動産取引の成果等の情報を継続的に投資家に対して開示することを求めているのです。

このようなルールがあるおかげで、投資家は安心して不動産取引に出資ができ、その結果、会社は資金調達が可能となり、不動産の売買や賃貸ができるようになるわけです。

この例を理解した上で、改めて不動産特定共同事業法の2つの目的を見てみると、より具体的なイメージができるはずです。

不動産特定共同事業法の目的
  1. 会社が投資家から出資された資金をもって不動産の売買や賃貸できるようにすること
  2. 投資家が不動産会社の倒産等により不測の損害を受けることから保護すること

略語、英訳

不動産特定共同事業法は、「不特法」「FTK法」と略して表記されることが多く、「ふとくほう」と呼ばれることが一般的です。
この記事では、不動産特定共同事業法を「不特法」不動産特定共同事業を「不特事業」と表記することとします。
また、英語では、不動産特定共同事業法は「Act on Specified Joint Real Estate Ventures」と翻訳されております。

不動産特定共同事業の活用事例とメリット

不特法の定義や目的は理解できたけど、まだいまいちピンと来ないのではないでしょうか。
具体的な活用事例を見ると、より一層イメージがしやすくなると思います。
下記で具体的な事例を紹介します。

事例1

あるエリアの複数の古民家をリノベーションして、宿泊施設や飲食店に賃貸して、まちづくりを行う。

<ビジネスモデル>

・投資家から出資を募り空き家となっている古民家を購入し、リノベーションを行い、その後、テナントを募り賃貸をした上で町づくりを行う。
・運用期間中は、賃貸事業から得られる賃料を元に投資家へ配当する。

<なぜ不特法を利用したのか?>

不動産開発会社の自己資金のみではリノベーション費用が賄えず、また、物件が古く金融機関からの資金調達は多くを望めない状況で、別の資金調達手段が必要だったため。

事例

保育所を建設し、保育所運営者へ賃貸する。

<ビジネスモデル>

・投資家からの出資をもとに土地を購入し、保育所を建設する。
・その後、保育所運営事業者へ賃貸する。その賃貸収入をもって投資家へ配当する。

<なぜ不特法を利用したのか?>

保育所運営者は、不動産業の専門ではなく、施設の開発リスク等、不動産に関するリスクを負担することを避ける傾向にあることから、自ら施設の開発資金を調達し、施設開発を実施することが困難であった。
保育所は投資対象として歴史が浅く、また投資規模としても金額が小さいため機関投資家からの投資対象とはなりづらく、機関投資家を対象とした私募ファンドを組成し、資金調達をすることが困難であった。

事例3

地方の廃校を宿泊施設にリノベーションしてホテル事業者に賃貸する。

<ビジネスモデル>

・投資家から出資を募り廃校を購入し、宿泊施設へリノベーションを行う。その後、ホテル運営事業者に賃貸する。
・ホテル運営事業者からの賃料収入をもとに、投資家へ配当する。

<なぜ不特法を利用したのか?>

地方でのホテル運営事業であり集客面でのリスクが高く、宿泊施設運営事業者が地域金融機関から資金を調達することが困難であった。

上記3例のような不特法活用事例が他にも国土交通省のホームページでは紹介されていますが、いずれの事例にも共通することは、対象不動産の担保価値や事業リスクの高さなどに起因して金融機関や機関投資家からの資金調達が見込めず、他の方法で資金を調達する必要があったことです。

この点、不特法を利用すれば、これらの事業に共感をしてくれる投資家からの出資を募ることができるため、不動産会社としては、資金調達の多様化を図れるようになるわけです。

法律の構成

不動産特定共同事業法では、施行令と施行規則によって細かいルールが定められております。
したがって、正しくルールを理解するためには、法律、施行令、施行規則を適宜参照する必要があります。

補足

なんで法律に全てルールを盛り込まないの?

法律を読んでいると、「政令で定めるところによる」など、省令や政令を参照しなければならないことが頻繁にありますが、なぜ、法律に全部ルールを盛り込まないのでしょうか?
実は、法律は国会でつくられるものですが、細かい事項もすべて国会で決めてしまうと、現場に即した柔軟なルールにならない可能性があるため、細かいことは行政に委ねることにしているのです。

管轄

不特事業の行政事務の主管は「国土交通省」となります。
したがって、不特事業に関して詳しい情報を網羅的に調べたい場合には、国土交通省のホームページを参照することとなります。

しかしながら、不特事業の許可申請にあたっては、「国土交通大臣及び金融庁長官による許可」「都道府県知事による許可」の2種類があり、申請区分に応じて窓口が異なりますので、注意が必要です。

法律の改正の変遷

不特法は、平成6年(1994年)に制定された法律ですが、より利用しやすい法律にするため、現在に至るまで複数回の改正を経ています。

2013年改正倒産隔離型スキーム(特例事業)を導入
2017年改正小規模不動産特定共同事業の創設。クラウドファンディングに対応した環境の整備
2019年改正不動産クラウドファンディングの活性促進施策の整備

不動産特定共同事業者とは

ここまでで不特法の概要を見てきました。
ここからは、不特法の規制対象者である「不動産特定共同事業者」について理解していきましょう。
すなわち、誰が不特法のルールを守らなければならないのかということです。

不特法では、「不動産特定共同事業(不特事業)」を行う者を「不動産特定共同事業者」と定義しています。

不動産特定事業とは?

① 不動産取引から生ずる収益又は分配を行う行為
② 不動産特定共同事業契約の締結の代理または媒介をする行為

不動産特定共同事業者とは?

① 不動産取引から生ずる収益又は分配を行う者
② 不動産特定共同事業契約の締結の代理または媒介をする者

下記設例でイメージしてみましょう。

不動産特定共同事業者の定義に、当該設例を当てはめるとA社とB社はいずれも「不動産特定共同事業者」であると解釈することができます。

設例

A社

アパートを購入して賃貸ビジネスに参入するため、アパート購入資金を投資家から集めて、賃貸経営から生ずる利益を投資家に分配した。

B社

A社のアパート賃貸ビジネスへ出資をしたい投資家を集め、投資家とA社間の契約の締結の仲介をした。

不動産特定共同事業者の定義への当てはめ

① 不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う者
⇒アパート賃貸経営から生ずる利益を投資家に分配するA社

② 不動産特定共同事業契約の締結の代理または媒介をする者
⇒A社と投資家の間の契約の締結の仲介を行うB社

なお、不特法では、①の取引をする者(A社)を「第一号事業者」②の取引をする者(B社)を「第二号事業者」と呼ぶこととしています。

A社・・・第一号事業者

B社・・・第二号事業者

その他、特例事業という枠組みがあり、特例事業のもとで不動産取引を行う者を「第三号事業者」投資家との契約の締結の仲介を行う者を「第四号事業者」と呼びます。

本記事では、混乱を招くので、特例事業の説明は割愛しますが、まずは、不動産特定共同事業者には、第一号から第四号まであるということを知っておいてください。

小規模不動産特定共同事業者とは

また、不動産特定共同事業者のうち、下記の要件に照らして事業規模の小さい取引を行う者「小規模不動産特定共同事業者」と定義しています。

小規模不動産特定共同事業者の定義

投資家一人あたりの出資額が100万円以下

投資家から受ける出資の総額が1億円以下

「小規模不動産特定共同事業」については、2017年の改正により創設されたものであり、比較的規模の小さい会社でも不特法が利用できるよう規制が緩和されています。

不動産特定共同事業者の許可制度

ここからは、不動産特定共同事業者に対する許可制度を見ていきましょう。

冒頭で、不特法の目的は、「不動産取引に出資する投資家が不測の損害を受けることを防止すること」だと説明しました。

投資家が一番困ることは、架空の投資案件に出資をさせられたり、自分の出資した資金が適切に運用されず、出資した会社が倒産する等により、出資したお金が一円も戻ってこないことです。

そこで、不特法では、不動産取引を適切に実施するための十分な人員数や組織体制、財産的基盤が整備されている会社にのみ不特事業を行うことを認め、「不動産取引特定共同事業者」になるためには行政からの許可を受けなければならないとしています。

許可の申請要件

不動産特定共同事業者の許可要件は下記の通り定められております。

1.資本金要件

十分な財産的基盤を確保するため、事業者の種別ごとに最低資本金(出資金)を充足すること

区分最低資本金
第一号事業者1億円
第二号事業者1,000万円
第三号事業者5,000万円
第四号事業者1,000万円
2.純資産要件

財務健全性を確保するため、純資産が資本金の額の100分の90以上であること

純資産≧資本金×0.9

3.役員等の過去の不正

会社又はその役員等が、許可の申請前5年以内に、不特事業に関し、不正や著しく不当な行為をしていないこと

4.業務管理者の設置

投資家に対する勧誘、契約内容の説明等の業務の適切な遂行を担保するため、不動産特定共同事業を行う事務所ごとに、最低1名、不動産特定共同事業の各種業務の実施に関し必要な助言、指導その他の監督管理を行う業務管理者を設置すること

(補足)業務管理者とは

「業務管理者」は次の(1)~(3)のすべての要件を満たす者
(1)許可を受けようとする者の従業者であること。
(2)宅地建物取引士であること。
(3)次のア~ウのいずれかに該当する者であること。
 ア.不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務の経験を有する者
 イ.主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習を修了した者
 ウ.登録証明事業から上記アと同等の能力を有するとの証明を受けている者

5.約款の適合性

不動産特定共同事業契約約款の内容が法定の基準に適合していること

6.財産的基礎

財産及び損益の状況が良好であり、かつ、許可取得後も良好に推移することが見込まれること

7.人的構成

適正な業務運営ができる人材の確保、人員配置、そして法令遵守体制が整っていること

8.会計監査

許可申請書類に添付する過去3年分の決算書に対して会計監査を受けること

許可の申請方法

不動産特定共同事業の許可申請は、許可申請書および添付書類を提出することになりますが、取得する許可の区分によって、大臣許可と知事許可に分かれ、それぞれで許可申請手続きの流れが異なります。
したがって、まずは、「大臣許可」か「知事許可」かを識別した上で、申請対象の行政機関の指導に従う必要があります。

ここでは、「大臣許可」の場合の許可申請の手続きの概要を紹介します。
詳細は、国土交通省のホームページをご参照ください。
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/tochi_fudousan_kensetsugyo_tk5_000001_00011.html

STEP
不動産投資市場整備室への問い合せ

不特事業の許可を申請する場合には、国土交通省の不動産投資市場整備室に事前に電話で問い合わせをします。その際に、申請しようとする許可の内容などの概要を確認され、その後の流れについて案内があります。

STEP
事前面談

事前面談では、申請事業者の事業内容、組織体制や想定している不動産特定共同事業等について質疑応答があります。

STEP
事前相談

許可申請の前に申請書類のドラフト版等を作成及び提出します。質問票のやりとりを中心に、法令上確認すべき事項や監督留意事項の着眼点に基づいてより詳細な内容が確認されます。この事前相談のプロセスが分量的にも多く、期間的にも長くなります。

STEP
許可申請

事前相談内容の確認完了後、許可申請の案内がされます。

STEP
許可審査

許可申請書類の提出後、許可審査が行われます。

STEP
許可書の発行及び交付

許可審査が通過後、許可書が発行・交付されます。

小規模不動産特定共同事業者の登録制度

上述の通り、不特法では、不特事業者については、資本金基準等の一定の要件を設けて、許可制としていますが、許可要件のハードルが高かったために、空き家・空き店舗等の再生をはじめとする小規模な事業を行うために不特事業者となることが実質的に難しい状況でした。

そこで2017年の法改正で、小規模な不動産特定共同事業については、簡易な手続で参入できるよう、あらたに小規模不動産特定共同事業という枠組みが創設されたました。

具体的には、「小規模不動産登録事業者」については、許可を不要とし、要件が緩和された「登録制」が採用されています。

小規模不特事業者の登録要件

下記の通り不特事業者の許可要件に比べて緩和されています。

スクロールできます
不特事業者の許可要件小規模不特事業者の登録要件
資本金要件第一号事業者・・・1億円  
第二号事業者・・・1,000万円
第三号事業者・・・5,000万円
第四号事業者・・・1,000万円
1,000万円
純資産要件純資産≧資本金×0.9%同左
役員等の過去の不正不正又は不誠実な行為をするおそれのある事業者の参入を制限するため、会社又はその役員等が、不動産特定共同事業に関し、不正又は著しく不当な行為をしていないこと同左
業務管理者の設置投資家に対する勧誘、契約内容の説明等の業務の適切な遂行を担保するため、不動産特定共同事業を行う事務所ごとに、最低1名、不動産特定共同事業の各種業務の実施に関し必要な助言、指導その他の監督管理を行う業務管理者を設置すること同左
約款の適合性不動産特定共同事業契約約款の内容が法定の基準に適合するものであること同左
財産的基礎・許可の申請の日を含む事業年度の前事業年度における財産及び損益の状況が良好であること。
・財産及び損益の状況が許可の申請の日を含む事業年度以降良好に推移することが見込まれること。
・借入金を有している場合、元本の弁済や利息の支払いが適切に履行されていること
・直近の連続する2事業年度において、当期純損失が生じていないこと
・破産手続や清算手続をしていないこと
人的構成法令を遵守した適正な業務運営を確保するため、適正な業務運営ができる人材の確保、人員配置、そして法令遵守体制が整っていること許可より若干要件が緩い
会計監査必要不要

小規模不特事業者の登録方法

小規模不特事業の登録申請は、不特事業の許可とほとんど同じで、登録申請書および添付書類を提出します。
不特事業者の許可と同様、登録の区分によって、大臣登録と知事登録に分かれ、それぞれで登録申請手続きの流れが異なります。

小規模不特事業者の登録の有効期限

登録の有効期間は、登録の日から起算して5年です。
有効期間の満了後も引き続き事業を行いたい場合は、登録の更新の申請を行うことが必要となります。

許可取得後、登録後の規制

ここまでで「不特事業者の許可」及び「小規模不特事業者の登録」に関する規制を説明しました。

まずは、十分な人材や組織が整備され、財産的基盤がある事業者のみに不特事業を実施することを求めることで、事業参入の入口で投資家保護を図っているわけです。

しかしながら、入口の規制のみでは投資家の保護は十分ではなく、取引開始後においても投資家の保護の必要があります。

すなわち、投資家としては、出資した資金に対するリターン(配当)を期待していますので、不特事業者の経営状況に問題ないのか、自分の出資した資金により実行された不動産取引の運用成績が知りたい訳です。

そこで、不特法では、不特事業者に、投資家及び行政機関に対して継続的に情報を開示するよう求めています。

具体的には、財産管理報告書事業報告書という書類を作成することを求めています。

事業報告書とは

不特事業者は、毎事業年度経過後3か月以内に、「事業報告書」という書類を作成し、許可を受けた行政機関(国土交通省または都道府県)に提出しなければならないとされています。(小規模不特事業者については、事業報告書の提出義務はなし

事業報告書では、不特事業者に関する下記情報を報告することとし、許可取り消し事由等が発生していないか、行政機関がモニタリングできるようにしています。

事業報告書で報告する事項

・事業の概要
・不特事業の締結業務の状況
・不特事業の実施の状況
・不特事業契約の締結の代理又は媒介業務の状況
・主要な株主または社員の名簿
・不特事業者の決算情報(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書)

なお、事業報告書のうち、決算情報については、公認会計士または監査法人の監査を受けなければならないとされています。

財産管理報告書とは

不特事業者は、一年を超えない期間ごとに、不特事業契約に係る財産の管理の状況について、「財産管理報告書」という書類を作成して、投資家に交付することが求められております。

財産管理報告書には、投資家に直接交付される書類であるため、投資家が出資した取引に係る経営成績を確認することができます。

財産管理報告書で報告する事項

・投資家の出資持分や財産の共有持分
・不動産取引の内容、不動産取引に係る決算情報並びに運用の経過
・不動産特定共同事業に係る委託業務の内容
・利害関係人との間の不動産特定共同事業に係る重要な取引の内容
・対象不動産に係る借入金の内容

なお、財産管理報告書については、公認会計士または監査法人の監査を受けるか否かは任意となっております。

事業報告書と財産管理報告書の違い

事業報告書も財産管理報告書もいずれも不特事業者や不特事業に係る情報を開示する目的で作成する書類ですが、下記の通り相違があります。

スクロールできます
事業報告書財産管理報告書
目的不特事業者全体の情報開示不動産取引の情報開示
作成単位不特事業者不特事業別(ファンド別)
提出先行政機関投資家
決算情報不特事業者全社不特事業のみ
会計監査必須任意

例えば、飲食業と不特事業を行っているX社という会社があったとします。
事業報告書では、X社自体の情報を開示することが目的ですので、事業の状況や決算情報は飲食業と不特事業を合算したものが開示されます。
一方で、財産管理報告書は不特事業の情報を開示することが目的ですので、不特事業に限定した事業の状況や決算情報のみが開示されます。

まとめ

不動産特定共同事業法は、会社が出資を受けて不動産の売買や賃貸をすることを可能とすると同時に、投資家が不動産会社の倒産等によって不測の損害を被らないように設計されている。
投資家の保護のために、不動産特定共同事業者を許可’制(小規模の場合には登録制)とすることにより十分な財産的基盤、体制、ガバナンスを求め、また、許可後も継続的に事業報告書や財産管理報告書による情報開示制度やモニタリングする仕組みを設けることで不正等が起こりづらい仕組み作りがされている。

不特法の目的

① 会社が投資家から出資された資金をもって不動産の売買や賃貸できるようにすること
② 投資家が不動産会社の倒産等により不測の損害を受けることから保護すること

投資家保護の仕組み

・不動産特定共同事業者について許可制とする。(小規模不特事業者は登録制)
・事業報告書や財産管理報告書によって投資家に対して継続的な情報開示を行う。

本記事では、「初学者が不特法の全体像を理解できるになること」を目的として、専門用語を極力使用しないで説明いたしました。各論点についてもう少し詳しく知りたい方は、関連記事を併せてご参照ください。

  • URLをコピーしました!
目次