不動産特定共同事業法の契約形態に「任意組合型」「匿名組合型」「賃貸型」の3つがあることが分かったけれど、各形態の取引イメージや特徴がいまいち理解できない方が多いのではないでしょうか。
これらの解説には法的な用語が多く登場し、正確な理解をしようとすると難解に感じるのですが、実は、具体例を考えてみると案外簡単に理解ができるものです。
そこで、私が公認会計士として不特法の許可取得のサポートを行う中で得た経験をもとに、不特法の契約形態について具体例を使いながら解説します。
この記事の要点は下記表の通りです。
任意組合型 | 匿名組合型 | 賃貸型 | |
目的 | 税金対策 | 資産形成 | 税金対策 |
業務執行者 | 組合員 | 営業者 | 不動産会社 |
出資者の責任 | 無限責任 | 有限責任 | 有限責任 |
出資額 | 数十万円~百万円 | 1万円~ | 50万円~ |
運用期間 | 数年~10年 | 数か月~1年 | 6年 |
不動産の所有権 | あり | なし | あり |
損益の帰属 | 組合員に帰属 | 営業者と匿名組合員に帰属 | 不動産会社と出資者に帰属 |
案件数 | 中 | 多 | 少 |
不動産特定共同事業法とは
まず、不動産特定共同事業法(以下、「不特法」と表記)とは、投資家の保護を図りつつ、不動産事業者の資金調達を可能とするために、設けられている法律であります。
近年では、不特法を利用した、不動産小口化商品の販売(不動産クラウドファンディング)が活発に行われています。
不動産事業者にとっては、既存の銀行借入に加えた新しい資金調達の方法として利用できるメリットがあり、投資家にとっては、資産形成や税金対策として投資できるメリットがあり、近年、急激に市場規模が拡大しております。
不動産特定共同事業法の概要について下記関連記事にて詳しく解説しておりますので、ご参照ください。
不動産特定共同事業契約とは
不特法の規制対象となるのは、「不動産特定共同事業契約(以下、「不特契約」と表記)」となり、代表的な契約形態として、「任意組合型(同項1号)」「匿名組合型(同項2号)」及び「賃貸型(同項3号)」が示されております。
不特法第2条3項(抜粋)
この法律において「不動産特定共同事業契約」とは、次に掲げる契約をいう。
法律の条文を読んでも何が言いたいのか全く理解できませんので、契約形態ごとに具体例を用いて説明していきます。
任意組合型
まずは、任意組合型の不特契約を解説します。
任意組合とは
まず、任意組合型の不特契約を説明する前に、「任意組合」とは何かを説明します。
任意組合契約とは、「複数の当事者(個人、法人問わない)が出資をして、特定の事業を共同で運営することを目的とする契約」のことを指します。
この「任意組合」は、民法により規定されている組合であり、「民法上の組合」「NK」「共同事業体」と呼ばれることもあります。
また、任意組合に出資した者のことを「組合員」と呼びます。
例えば、A氏、B氏、X社という3者がそれぞれ300万円ずつ金銭出資をして、防災普及活動を推進する協会(以下、「防災協会」と表記)を共同で運営することを約束したとしましょう。
まず、この3者間の約束によって、「複数の当事者が出資をして、特定の事業を共同で運営することを目的とする契約」が締結されていますので、防災協会は民法上の「任意組合」に該当し、A氏、B氏及びX社は、「組合員」となります。
任意組合の特徴は以下の通りです。
(特徴1)任意組合の業務執行は組合員が行う。(ただし、一部の組合員を業務執行員に定めることが可能)
(特徴2)任意組合が保有する財産は、任意組合には帰属せず、各組合員に出資割合等に応じて帰属する。
(特徴3)任意組合の各組合員は、任意組合の債権者に対して無限責任を負う。
(特徴4)任意組合の損益は、組合に帰属するのでなく、組合の各構成員に直接的に帰属する。
それでは、先ほどの例を使って、任意組合の特徴を理解していきましょう。
(特徴1)任意組合の業務執行は組合員が行う。(ただし、一部の組合員や第三者に委任可能)
任意組合の業務は、組合員の過半数で決定し、各組合員が執行するのが原則とされており、防災協会の業務執行は組合員A氏、B氏、X社がそれぞれ行います。
ただし、業務執行を組合員の一部や組合員以外の第三者に委任することも可能とされています。
(特徴2)任意組合が保有する財産は、任意組合には帰属せず、各組合員に出資割合等に応じて帰属する。
防災協会として、防災パトロール用の車両を600万円で購入した場合、任意組合として600万円の資産を取得することになるわけですが、任意組合には法人格がないため、任意組合自体が資産を所有することはできず、当該車両は任意組合員(A氏、B氏、X社)で共有することになります。
そのため、600万円の車両自体は物理的に分割はできないものの、A氏、B氏、X社は、それぞれ200万円(出資比率で600万円を按分したと仮定)の車両の所有権を持っていることになります。
(特徴3)任意組合の各組合員は、任意組合の債権者に対して無限責任を負う。
防災協会が車でパトロールをしている最中に、事故を起こしてしまい損害賠償請求を受けたとします。
仮に、損害賠償金が3,000万円の場合、組合員A氏、B氏、X社は、連帯して3,000万円の支払い義務を負います。
この点、有限責任であれば、組合員は出資金の額を限度として責任を負えばいいのですが、任意組合員の責任は無限責任であるため、出資額(この例では300万円)を超えた責任も負う必要があります。
(特徴4)任意組合の損益は、組合に帰属するのでなく、組合の各構成員に直接的に帰属する。
防災協会が防災普及商品の販売をして、その事業から300万円の利益が出たとします。この場合、300万円の利益は、防災協会には帰属せず、組合員のA氏、B氏、X社に100万円ずつ帰属(300万円を出資割合で按分したと仮定)することになります。
任意組合型の不特契約とは
「任意組合」の仕組みと特徴が理解できたところで、ここからは任意組合型の不特契約を説明していきます。
改めて、任意組合型の不特契約の定義を見てみます。
この定義を分解すると以下のように解釈できます。
① 複数の者(個人、法人問わない)が不動産取引のために出資する。
② 出資者の中から代表者を決めて、不動産取引を代表者に委任する。
③ 不動産取引の結果生じる利益を出資者に分配する。
この①~③を実例に置き換えると以下のような取引が考えられます。
A氏、B氏、X社という3者がそれぞれ2,000万円ずつ金銭出資をして、6,000万円のアパートを購入して不動産賃貸事業を共同で運営することとしました。(①に該当)
ただし、A氏、B氏は金銭出資のみとし、不動産賃貸事業の運営は、不動産会社である組合員X社に全面的に委任することにしました。(②に該当)
そして、X社が不動産賃貸事業を運営した結果、x1年に600万円の利益が獲得できたので、A氏、B氏、X社に200万円(600万円×出資割合)ずつ配当として利益を分配しました。(③に該当)
ここで、改めて「任意組合」の定義を見てみましょう。
この取引は、A氏、B氏、X社が出資をして、不動産賃貸事業を共同で運営することを目的として組合を形成しておりますので、「任意組合」の枠組みにより不動産取引が行われていることとなります。
また、任意組合には、下記特徴があることを説明しました。
(特徴1)任意組合の業務執行は組合員が行う。(ただし、一部の組合員や第三者に委任可能)
(特徴2)任意組合が保有する財産は、任意組合には帰属せず、各組合員に出資割合等に応じて帰属する。
(特徴3)任意組合の各組合員は、任意組合の債権者に対して無限責任を負う。
(特徴4)任意組合の損益は、組合に帰属するのでなく、組合の各構成員に直接的に帰属する。
この特徴を本取引に当てはめると以下のように解釈されます。
(特徴1)任意組合の業務執行は組合員が行う。(ただし、一部の組合員や第三者に委任可能)
原則として、不動産賃貸事業の業務執行者、組合員であるA氏、B氏、X社が行いますが、一部の組合員または第三者に業務執行を委任することができますので、本設例では、不動産会社である組合員X社が業務執行を行うこととなっております。
(特徴2)任意組合が保有する財産は、任意組合には帰属せず、各組合員に出資割合等に応じて帰属する。
任意組合として取得した6,000万円のアパートの所有権は、組合員であるA氏、B氏、X社がそれぞれ出資割合に応じて取得することになります。
すなわち、6,000万円のアパート自体は物理的に分割はできないものの、A氏、B氏、X社は、それぞれ2,000万円(出資比率で6,000万円を按分)のアパートの所有権を持っていることと同義と解釈されます。
(特徴3)任意組合の各組合員は、任意組合の債権者に対して無限責任を負う。
仮に、当該不動産賃貸事業において債務超過の状態に陥った場合、組合員であるA氏、B氏、X社の責任は出資額に限定されず、債務を弁済する責任を連帯して負うことになります。
(特徴4)任意組合の損益は、組合に帰属するのでなく、組合の各構成員に直接的に帰属する。
任意組合が不動産賃貸経営によりx1年に600万円の利益を獲得しましたが、この利益は組合には帰属せず、200万ずつの配当を受け取った組合員A氏、B氏、X社に帰属します。
したがって、任意組合として獲得した利益600万円に対して課税されず、各組合員が受領した配当200万円に対して課税されることになります。(A氏、B氏は個人であるため所得税、X社は法人であるため法人税が課税されます。)
任意組合型の不特契約のまとめ
・不特契約の任意組合型では①~③を満たす取引が実施されます。
①複数の者(個人、法人問わない)が不動産取引のために出資する。
②出資者の中から代表者を決めて、不動産取引を代表者に委任する。
③不動産取引の結果生じる利益を出資者に分配する。
・任意組合型により取得した不動産の所有権は、出資者(=組合員)に帰属する。
・任意組合型に基づく不動産取引から生じた利益については、配当を通じて組合員に帰属し、組合員に課税される。
匿名組合型
次に、匿名組合型の不特契約を解説します。
匿名組合とは
まず、匿名組合型の不特契約を説明する前に、「匿名組合」とは何か説明します。
匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる契約のことを指します。
この「匿名組合」は、商法により規定されている組合であり、「TK」と呼ばれることもあります。
また、匿名組合に出資した者のことを「匿名組合員」、出資を受けて事業を営むものを「営業者」と呼びます。
なお、匿名組合契約は営業者と匿名組合員の1対1の契約であり、また、匿名組合が対外的に事業を営む際には、営業者の名義により取引を行うことになり、匿名組合員である出資者が、対外的に表に出てくることがないため、組合員の匿名性の高さから「匿名組合」と呼ばれています。
例えば、Z社が太陽光発電事業を行うために、A氏、B氏、X社との間で、それぞれ1,000万円ずつ金銭出資を受け、太陽光発電事業から生ずる利益を分配する契約を締結したとしましょう。
まず、この契約は「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約」になりますので、匿名組合契約に該当し、Z社が「営業者」、A氏、B氏及びX社が「匿名組合員」となります。
匿名組合の特徴は以下の通りです。
(特徴1)匿名組合の業務執行は営業者が行い、匿名組合員は出資をするのみ。
(特徴2)匿名組合が保有する財産は、営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。
(特徴3)匿名組合員は、原則として出資額以上の責任を負うことはない。(有限責任)
(特徴4)匿名組合の損益は、組合に帰属するのではなく、営業者と匿名組合員に帰属する。
それでは、先ほどの例を使って、匿名組合の特徴を理解していきましょう。
Z社が太陽光発電事業を行うために、A氏、B氏、X社との間で、それぞれ1,000万円ずつ金銭出資を受け、太陽光発電事業から生ずる利益を分配する契約を締結した。
(特徴1)匿名組合の業務執行は営業者が行い、匿名組合員は出資をするのみ。
匿名組合の業務執行は営業者であるZ社が行い、匿名組合員A氏、B氏、X社は出資するのみで、業務執行に関与することはできません。
(特徴2)匿名組合が保有する財産は、営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。
Z社が太陽光発電設備を3,000万円で購入した場合、匿名組合員が資産を所有することはできず、当該設備は営業者であるZ社が所有することになります。
(特徴3)匿名組合員は、原則として出資額以上の責任を負うことはない。(有限責任)
仮にZ社が倒産し、その時点で多額の借金を抱えていたとしても、匿名組合員A氏、B氏、X社としては出資額1,000万円を超えて責任を負うことはありません。
(特徴4)匿名組合の損益は、組合に帰属するのではなく、営業者と匿名組合員に帰属する。
太陽光発電事業により1,000万円の利益が出て、うち900万円を匿名組合員に配当したとしましょう。
この場合、利益1,000万円はいったん営業者であるZ社に帰属しますが、匿名組合員へ分配した900万円は、A氏、B氏、X社に帰属することになります。
その結果、1,000万円の利益は最終的に下記のように帰属します。
営業者 | 匿名組合員 | ||
Z社 | A氏 | B氏 | X社 |
100万円 (1,000-900万円) | 300万円 (900万円×出資割合) | 300万円 (900万円×出資割合) | 300万円 (900万円×出資割合) |
匿名組合型の不特契約とは
「匿名組合」の仕組みが理解できたところで、ここからは匿名組合型の不特契約を説明していきます。
改めて、匿名組合型の定義を見てみます。
この定義を分解すると以下のように解釈できます。
①出資者は、営業者が行う不動産取引のために出資を行う。
②営業者は、出資金をもとに不動産取引を行う。
③営業者は、不動産取引の結果生じる利益を出資者に分配する。
この①~③を実例に置き換えると以下のような取引が考えられます。
不動産会社であるZ社が計画している6,000万円のアパートを購入して行う不動産賃貸事業に対して、A氏、B氏、X社という3者がそれぞれ2,000万円ずつ金銭出資をしました。(①に該当)
出資金をもって、Z社はアパートを購入し、不動産賃貸事業を行いました。(②に該当)
そして、Z社が不動産賃貸事業を運営した結果、x1年に600万円の利益が獲得できたので、利益の一部の450万円をA氏、B氏、X社に150万円ずつ配当として分配しました。(③に該当)
ここで、改めて「匿名組合」の定義を見てみましょう。
この取引は、A氏、B氏、X社が、Z社の行う不動産賃貸事業に対して出資をして、不動産賃貸事業から生ずる利益を分配する契約を締結しておりますので、「匿名組合」の枠組みにより不動産取引が行われていることとなります。
また、匿名組合には、下記特徴があることを説明しました。
匿名組合の特徴
(特徴1)匿名組合の業務執行は営業者が行い、匿名組合員は出資をするのみ。
(特徴2)匿名組合が保有する財産は、営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。
(特徴3)匿名組合員は、原則として出資額以上の責任を負うことはない。(有限責任)
(特徴4)匿名組合の損益は、組合に帰属するのではなく、営業者と匿名組合員に帰属する。
この特徴を本取引に当てはめると以下のように解釈されます。
(特徴1)匿名組合の業務執行は営業者が行い、匿名組合員は出資をするのみ。
不動産賃貸事業の業務執行は営業者であるZ社が行い、匿名組合員であるA氏、B氏、X社は出資をするのみで、業務執行には携わりません。
(特徴2)匿名組合が保有する財産は、営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。
Z社が、取得した6,000万円のアパートの所有権は、営業者であるZ社に帰属し、匿名組合員であるA氏、B氏、X社は所有権を有しません。
(特徴3)匿名組合員は、原則として出資額以上の責任を負うことはない。(有限責任)
仮にZ社が倒産し、その時点で多額の借金を抱えていたとしても、匿名組合員A氏、B氏、X社としては出資額2,000万円を超えて責任を負うことはありません。
(特徴4)匿名組合の損益は、組合に帰属するのではなく、営業者と匿名組合員に帰属する。
Z社が不動産賃貸経営によりx1年に600万円の利益を獲得しましたが、この利益は、まず営業者であるZ社に帰属します。
その後、営業者が匿名組合員に配当をすることにより、配当金額分は匿名組合員に帰属することになります。
したがって、Z社に一旦は利益600万円が計上されますが、配当金の450万円は匿名組合員に最終的に帰属することになりますので、Z社においては、150万円(600万円-450万円)に対して課税され、匿名組合員においては、受領した配当150万円に対して課税されることになります。(A氏、B氏は個人であるため所得税、X社、Z社は法人であるため法人税が課税されます。)
匿名組合型の不特契約のまとめ
・不特契約の匿名組合型では①~③を満たす取引が実施される。
①出資者は、営業者が行う不動産取引のために出資を行う。
②営業者は、出資金をもとに不動産取引を行う。
③営業者は、不動産取引の結果生じる利益を出資者に分配する。
・匿名組合型により取得した不動産の所有権は、営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。
・匿名組合型に基づく不動産取引から生じた利益については、営業者と匿名組合員に帰属する。
賃貸型
最後に、賃貸型の不特契約を説明します。
改めて、賃貸型の定義を見てみます。
賃貸型については、具体例を使って説明します。
不動産会社であるZ社は、あるマンションの1室を6,000万円で購入して賃貸したいと考えています。
そこで、このマンションの運用に賛同してくれる出資者を集め、Z社と出資者(A氏、B氏、X社)がマンションの1室を共同で購入することにします。
マンションの1室は物理的に分割できないものの、便宜的に5口(1口当たり1,000万円)に分割し、下記の通り資金を拠出し、マンションを共有しました。
不動産会社Z社・・・1口1,000万円(共有持分1/5)
出資者A氏・・・1口1,000万円(共有持分1/5)
出資者B氏・・・1口1,000万円(共有持分1/5)
出資者X社・・・2口2,000万円(共有持分2/5)
ここで、実際にマンションを運用するのは、Z社でありますので、出資者A氏、B氏、X社は、Z社に自らの所有する持分をZ社に賃貸する契約を締結します。
そして、Z社がマンションの運用の結果生じた利益をA氏、B氏、X社に分配する契約も同時に締結します。
なお、賃貸型の場合、出資者は実際に不動産を所有することになりますので、不動産登記簿上も出資者の名義で登記されます。
賃貸型の不特契約のまとめ
・賃貸型では、出資者が購入した不動産を不動産会社に賃貸するスキームである。
・賃貸型の出資者は不動産の所有権を有する。
3つの契約形態の商品設計
それでは、実際にウェブ上で募集されている不動産小口化商品情報をもとに、契約形態ごとの商品設計を比較してみます。
任意組合型 | 匿名組合型 | 賃貸型※ | |
不動産の所有権 | あり | なし | あり |
目的 | 税金対策 | 資産形成 | 税金対策 |
出資額 | 数十万円~百万円 | 1万円~ | 50万円~ |
運用期間 | 数年~10年 | 数か月~1年 | 6年 |
匿名組合型については、短期間かつ小額から投資できるのに対して、任意組合型と賃貸型は比較的まとまった金額が必要、かつ、運用期間は長くなっております。
この違いは、主に目的の違いに起因していると考えられます。
任意組合型と賃貸型では、出資者に不動産の所有権があることを利用して、相続税や贈与税対策ができることから、そのメリットを享受するために、出資額が高く、運用期間も長めに設定されていると考えられます。
なお、募集されている商品の運用利回りを見てみると、対象物件が都心か地方か、事業用か居住用かといった、投資対象の不動産のリスクに応じた想定利回りが設定されている印象であります。
ただし、任意組合型及び賃貸型については、節税メリットを享受できる可能性もありますので、商品の想定利回りに加えて、節税額も加味した実質的な利回りを考えて、商品の選択をすべきであると考えられます。
3つの契約形態の市場規模
では、次に、3つの契約形態の市場規模を見てみましょう。
3つの契約形態による出資募集額の推移は以下の通りです。
任意組合型 | 匿名組合型 | 賃貸型 | |
2015年 | 121億円 | 646億円 | 1億円 |
2016年 | 70億円 | 386億円 | 60億円 |
2017年 | 128億円 | 400億円 | 1億円 |
2018年 | 158億円 | 432億円 | 1億円 |
2019年 | 211億円 | 1,458億円 | 5億円 |
2020年 | 221億円 | 642億円 | 1億円 |
匿名組合型の商品の取扱高が圧倒的に多く、賃貸型については、ほとんど利用されていないことがわかります。
やはり匿名組合型については、少額かつ短期間から投資をできる手軽さから、商品ラインナップも充実している印象です。
まとめ
不特法の契約形態として、「匿名組合型」「任意組合型」「賃貸型」の3つが定められています。そのうち「賃貸型」は、ほとんど利用されていないのが実情であり、「匿名組合型」と「任意組合型」が主に利用されています。
不動産を所有しない「匿名組合型」については資産形成を目的に小額から短期間で投資できるメリットがあり、商品数が多いのが特徴です。
一方で、不動産を所有する「任意組合型」「賃貸型」については、相続税・贈与税対策に利用することができることから、まとまった金額(数十万円~百万円程度)の出資額が必要であったり、運用期間が匿名組合型に比べて長めに設定されています。
当監査法人では、不特法許可取得支援を行っております。
許可要件を財務的に満たしているか、不特法許可取得に向けていつ頃に会計監査を受けたほうが良いか、予備調査による監査報酬の見積もりが欲しい、許可取得に向けてコンサルタントを紹介して欲しいなど、様々なご要望に応じております。
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