収益認識基準導入による有償支給取引への会計上の影響③

Ⅰ はじめに

「収益認識に関する会計基準」および「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「新収益認識基準」という。)の導入が有償支給取引に関する会計処理与える影響に関し、今回はすでに新収益認識基準を導入している企業における影響(金額的影響や開示)を参照していきたいと思います。なお、前回、前々回の設例同様、自動車部品メーカーに関する記事となっています旨、ご理解下さい。

 

本文中のうち意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。


Ⅱ 金額的影響

(下表はEDINETより必要項目を抜粋)

 

 

日本基準売上高A

IFRS売上高B

下落率(B-A)/A

八千代工業

195,343百万円

161,160百万円

17%

デンソー

5,421,068百万円

5,362,772百万円

1%

日信工業

191,911百万円

189,693百万円

1%

豊田自動織機

2,788,506百万円

2,214,946百万円

21%

テイ・エステック

影響額の記載なし

 

 

ユタカ技研

284,959百万円

181,264百万円

36%

ケーヒン

358,559百万円

349,220百万円

3%

エイチワン

203,695百万円

200,224百万円

2%

ショーワ

影響額の記載なし

 

 

 

影響が大きい会社では3割超の売上減少影響となっています。自社での影響額について、新収益認識基準の導入前に一度試算を行い、影響の程度をあらかじめ把握しておくことが望ましいといえます。

Ⅲ 開示

(EDINETより抜粋)

 

<八千代工業>IFRS

 

(有償支給取引)

 

当社グループは、得意先から部品を仕入、加工を行った上で加工費等を仕入価格に上乗せして加工品を当該得意先に対して販売する取引(以下「有償支給取引」という。)を行っております。日本基準では、有償支給取引に係る売上高と売上原価を連結損益計算書上、総額表示しております。IFRSでは、当該取引の加工費等を「売上収益」で純額表示しております。

この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて連結損益計算書の「売上収益」と「売上原価」が341億8千3百万円減少しております。

 

<デンソー>IFRS

 

(IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の適用)

 

・従来、売上原価として計上していた一部の費用について、当連結会計年度より顧客に支払われる対価として売上収益から減額しています。この結果、当連結会計年度において売上収益、売上原価がともに58,296百万円ずつ減少しています。

・買戻し契約に該当する一部の有償支給取引について、当連結会計年度より金融取引として棚卸資産を引き続き認識するとともに、有償支給先に残存する支給品の期末棚卸高について金融負債を認識しています。この結果、当連結会計年度の期首及び当連結会計年度末において、棚卸資産がそれぞれ17,150百万円、15,559百万円ずつ増加、その他の金融資産がそれぞれ464百万円、406百万円ずつ増加、その他の金融負債がそれぞれ17,614百万円、15,965百万円ずつ増加しています。

 

<日信工業>IFRS

 

(有償支給取引)

 

後日、加工を行ったうえで販売することになる得意先から有償で支給を受けた部品等について、IFRSでは、仕入を認識せず売上高から当該部品等の価額を控除していますが、日本基準では、仕入を認識し売上高及び売上原価として表示します。

そのため、IFRSでは日本基準に比べて、売上高及び売上原価が2,218百万円減少しています。

 

<豊田自動織機>IFRS

 

(有償支給取引)

有償支給取引について、日本基準では有償支給元への売り戻し時に売上高と売上原価を計上しておりましたが、IFRSでは加工代相当額のみを純額で収益として認識しております。この結果、売上高が573,560百万円減少し、売上原価が573,560百万円減少しております。

 

<テイ・エステック>IFRS

 

(有償受給取引)

 

当グループは、得意先から部品・原材料を仕入れ、加工を行った上で加工費等を仕入価格に上乗せして加工品を当該得意先に対して販売する取引(以下「有償受給取引」という。)を行っています。

 

日本基準では有償受給取引に係る「売上高」と「売上原価」を連結損益計算書上総額表示していましたが、IFRSでは当該取引の加工費等を「売上収益」で純額表示しています。

 

得意先から有償で支給される部品・原材料の期末棚卸高について、日本基準では「棚卸資産」として表示していましたが、IFRSでは「営業債権及びその他の債権」として表示しています。

 

(有償支給取引)

 

当グループは、取引先へ有償で部品・原材料を支給し、当該取引先が加工を行った上で加工費等を支給価格に上乗せして加工品を当該取引先から購入する取引を行っています。

取引先へ有償で支給する部品・原材料について、日本基準では支給時点で棚卸資産の消滅を認識していましたが、IFRSでは金融取引として「棚卸資産」を引き続き認識するとともに、取引先に残存する部品・原材料の期末棚卸高について「営業債務及びその他の債務」を認識しています。

 

<ショーワ>IFRS

 

表示組替

・日本基準では、得意先からの有償支給品取引について売上高と売上原価を総額表示していましたが、IFRSでは、売上収益と売上原価の純額を売上収益として計上しています。

上記の他、ユタカ技研、ケーヒン、エイチワンも八千代工業と同様の開示を行っています。

Ⅳ まとめ

全3回にわたり新収益認識基準の導入が有償支給取引に与える影響を確認してきましたが、情報の収集には経理以外の部門の協力が欠かせないことや、システムの更改、支給元、支給先との調整が必要となることを考えると、新収益認識基準対応のプロジェクトチームを立ち上げ、導入スケジュールを策定した上で計画的な導入を行うことが望ましいといえます。

Ⅴ 関連リンク