収益認識基準導入による有償支給取引への会計上の影響②

Ⅰ はじめに

「収益認識に関する会計基準」および「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「新収益認識基準」という。)の導入が有償支給取引に関する会計処理与える影響について、前回は支給先の会計処理を中心にお伝えしました。今回は支給元の会計処理について、検討していきたいと思います。

 

なお、本文中のうち意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておきます。


Ⅱ 設例(支給元)

新収益認識基準に基づく会計処理の概要については、「収益認識基準導入による有償支給取引への会計上の影響①」の記事をご参照ください。

また、以下、設例及び解説については、自動車部品メーカーを想定し、話を進めていきます。

(1)前提条件

 

 

 

 

 

 

自動車部品メーカーのA社は、外注先C社に部品Yの加工の一部を委託している。

C社への加工委託にあたっては、A社が@140円で自社手配した材料T@140円でC社に有償支給し、加工後の部品Y@180円で買い戻している。

C社に有償支給した材料Tの所有権は支給した時点でC社に移るが、当該材料Tは部品Yの加工のみに利用することが契約上定められており、加工後の部品Yは全量A社が買い取ることとなっている。

その後、A社にて部品Yに更に加工を加え、自動車メーカーのH社に@250円で販売している。

X1期の取引

  1. 材料T25035,000円(@140円)で外部より仕入れた。

  2. 材料Tのうち15021,000円(@140円)をC社に有償支給し、100個が期末にA社の材料在庫として残っている。

  3. C社において、部品Y100個の加工が完了したため、A社は10018,000円(@180円)で購入した。支給した材料Tのうち50個は、C社に残存している。

  4. A社の部品Yのラインでは、労務費が3,000円、減価償却費が1,500円発生している。(材料費、労務費、減価償却費以外の製造原価は発生しないと仮定する。)

  5. A社は、C社より買い戻した部品Y100個のうち、80個の部品が完成し、うち50個をH社に12,500円(@250円)で販売した。A社には、20個の仕掛品(加工進捗度50%)と30個の製品在庫が残っている。

  6. 期末在庫は以下の通りである。(期首在庫は存在しないと仮定する。)

 以上を基にA社の仕訳、決算書を作成せよ。

 

保管場所

在庫数

材料単価

外注加工単価

自社加工単価

材料T

A

100

140

-

-

材料T

C

50

140

-

-

仕掛品Y

A

20

140

40

25

製品Y

A

30

140

40

50

(2)解説

まず、A社はC社に材料Tを有償支給している側であるから、支給元であるといえます。また、材料Tの使用は部品Yの加工のみに制限されており、加工後の部品YはA社が全量買い取ることとなっているため、当該支給品に関し買戻し義務があるといえます。以上の前提に基づくと、各取引の仕訳は次の通りです。

材料T仕入時の仕訳

自社手配の材料仕入については、原価を構成するため、現行の処理と変わらず材料費を認識します。(変更はありません。)

材料TC社への有償支給時の仕訳

外注先へ有償支給した材料Tは買い戻す必要があるため、新基準では、棚卸資産の消滅を認識できません。

材料TC社から買い戻した時の仕訳

外注加工賃相当額(@40円)のみ棚卸資産(製造原価)の発生を認識し、支給時に計上した負債を取り崩します。

労務費及び減価償却費の計上

材料以外の製造原価には何ら影響はないため、現行通りの処理を継続します。(変更はありません。) 

部品Yの売上時

本設例では、H社からの受給品は存在しないため、現行も新基準も同じ仕訳となります。

在庫の計上

有償支給先C社に存在する在庫もA社の在庫として認識する必要があります。

ただし、日本基準では、代替的な処理として、当該在庫の計上を連結財務諸表のみで実施することが例外的に認められています。

⑦決算書(製造原価報告書)

⑧損益計算書

損益計算書は変わりません。

⑨貸借対照表

有償支給先にある棚卸資産を新収益認識基準では自社の棚卸資産として認識し、また、支給品の買戻義務として負債を同額計上します。

Ⅳ まとめ(支給元)

新収益認識基準の適用に当たり、支給先の場合と同様、会計処理上、仕訳への影響、関連するシステムへの影響を把握しておく必要があります。

【仕訳への影響】

仕訳については、①有償支給取引に関する仕訳を全面的に見直す方法、及び②現行の仕訳に加えて組替仕訳を計上する方法の2種類が考えられます。①については、設例をご参照ください。②については、設例の数値を基に考えられる組替仕訳を以下に示しておきます。

なお、いずれの方法を採用する場合でも、支給先にある支給品の在庫数の把握が必要となることから、社内での調整に加え、支給先から追加で在庫照明を入手することの要否を早めに検討する必要があります。

【システムへの影響】

棚卸資産の品番マスターを追加する必要があります。

ダウンロード
設例と同様の内容です。
設例(有償支給取引支給元).pdf
PDFファイル 522.7 KB

Ⅴ 関連リンク